法人決算において最低限必要な帳簿は仕訳帳(とそれから作る総勘定元帳)なのですが、この仕訳帳を作るために必要となるのが帳簿のルールの知識です。
と言っても難しい話ではなく、こういう出来事にはこういう書き方という対応表みたいなものさえ分かれば良いんです。
ルールというのは万人が共通理解するためのツールであるわけなので、帳簿(仕訳帳)には自分なりの個性的な書き方なんてものは存在しません。
みんな一緒の書き方なので、対応表だけあれば良いんです。
ということで、ネット系スモールビジネスを営む猫CEOがこれまでに使った仕訳ルールをご紹介します。
実際に使った仕訳ルールなので、同じような弱小CEOの皆さん(特に初めての法人決算を迎える方)にとっては、超具体的かつ即有用なものであると思います!
超具体的な仕訳事例集
借方・貸方みたいなややこしいキーワードは説明すると長くなるので、こういうもんなんだと思うか、詳しく知りたければググってください。
ここでは超具体的な仕訳事例だけ紹介しています。
売上の発生
GoogleやAmazon、その他のASPで売上があがった場合、2つの仕訳が必要です。
そのようなASPでも売上(報酬)が確定する日と、その売上(報酬)が振り込まれる日があるかと思います。
なので、
- 売上(報酬)が確定したとき → 売上の発生
- 売上(報酬)を受け取ったとき → 現金の増加
の2つの仕訳が必要となるのです。
具体的には、例えばGoogleは毎月1日に前月の売上(報酬)が確定し、毎月22日頃に振り込まれます。
これを1行日記風に書くと
- 1/1 Google Adsense(12月分)の売上(報酬)が1万円と確定した!
- 1/22 Google Adsense(12月分)の売上(報酬)である1万円が振り込まれた!
となります。
仕訳はこんな感じです。
取引日 | 借方 | 補助科目 | 金額 | 貸方 | 補助科目 | 金額 | 摘要 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1/1 | 売掛金 | 10,000 | 売上高 | 10,000 | Google Adsense(12月分) | ||
1/22 | 普通預金 | 10,000 | 売掛金 | 10,000 | Google Adsense(振込) |
※補助科目や摘要は仕訳を分かりやすくするためのもので、自分なりの書き方でOKです。
1/1の段階で売上が確定しているので、現金はまだ振り込まれていなくても仕訳する必要があります。
売掛金というのは、お店側から見たいわゆるツケで、もらえるはずのお金ということです。
そして1/22に、もらえるはずのお金(売掛金)が実際に普通預金に振り込まれたのでこれも仕訳します。
これが売上発生の基本パターンです!
ちょっとした応用パターンもやってみましょう。
Google Adsenseの場合は振込手数料はかからずに売上(報酬)が満額振り込まれますが、ASPによっては振込手数料が引かれる場合があります。
例えば、大手ASPであるファンコミュニケーションズ(A8.net)では、ゆうちょ銀行宛の振込手数料は65円です。
そして、何度も振込手数料がかかることを防ぐために、5,000円支払方式といって、売上(報酬)の繰越合計金額が5,000円以上になるまで振込しないような支払方式があります。
A8.netでは毎月月末に売上(報酬)が確定し、翌々月の15日頃に基準額を満たしていれば振込されます。
この場合の仕訳事例を1行日記風に書くと
- 1/31 A8.net(1月分)の売上(報酬)が2,000円と確定した!
- 2/28 A8.net(2月分)の売上(報酬)が4,000円と確定した!
- 3/31 A8.net(2月分)の売上(報酬)が3,000円と確定した!
- 4/15 A8.netの売上(報酬)である6,000円から手数料65円を除いた5,935円が振り込まれた!
となります。
注意点としては、a8.netでは売上(報酬)が確定した翌々月の15日頃に振込となるため、上の例では2/28分までの売上(報酬)が4月に振り込まれるため、3/31分は含まれません。
したがって、1/31分の2,000円+2/28分の4,000円の6,000円が4/15の振込対象となります。
仕訳はこんな感じです。
取引日 | 借方 | 補助科目 | 金額 | 貸方 | 補助科目 | 金額 | 摘要 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1/31 | 売掛金 | 2,000 | 売上高 | a8.net | 2,000 | a8netアフィリエイト(1月分) | |
2/28 | 売掛金 | 4,000 | 売上高 | a8.net | 4,000 | a8netアフィリエイト(2月分) | |
3/31 | 売掛金 | 3,000 | 売上高 | a8.net | 3,000 | a8netアフィリエイト(3月分) | |
4/15 | 普通預金 | 5,935 | 売掛金 | a8.net | 6,000 | a8netアフィリエイト(振込) | |
支払手数料 | 65 |
1番下の行だけほとんど何も書いていないように見えますが、これは下2行で1つと思ってください。
もらえるはずだったお金(売掛金)が実際に普通預金に振り込まれたのだけど、支払手数料として65円の費用が発生したと考えます。
ネット系スモールビジネスにおける売上の発生パターンはこんなもんだと思います。
実店舗のように売上が上がった瞬間に現金を受け取るようなことはあり得ないので、売上→売掛金→普通預金という流れになります。
利息を受け取る
銀行の普通預金には超微々たる額ですが利息が付きます。
法人口座であってもそれは同じで、大体は年2回決まった日付で利息が振り込まれます。
例えば、ゆうちょの場合は4/1と10/1です。
超微々たる額の利息ですが、実はややこしい!
というのも、利息は税金を引かれて振り込まれるからです。
そして利息の仕訳は2パターンのどちらでも良いことになっています。
1つめのパターンは入金された額をそのまま使う方法です。
これを1行日記風に書くと
- 4/1 普通預金の利息として6円が振り込まれた!
- 10/1 普通預金の利息として6円が振り込まれた!
となります。
仕訳はこんな感じです。
取引日 | 借方 | 補助科目 | 金額 | 貸方 | 補助科目 | 金額 | 摘要 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
4/1 | 普通預金 | 6 | 受取利息 | 6 | ゆうちょ利子(税込) | ||
10/1 | 普通預金 | 6 | 受取利息 | 6 | ゆうちょ利子(税込) |
※税込というのは、税金が引かれた状態でという意味です。
こちらのパターンは仕訳は簡単なのですが、決算で法人税を計算するときにややこしくなります。
普通の売上とは違って、利息の6円はすでに税金が引かれた(前払いした)状態ですから、これを別にして計算したりする必要があるためです。
ということでオススメされることの多い2つめのパターンは最初から税金を考慮する方法です。
これを1行日記風に書くと
- 4/1 普通預金の利息として7円のうち税金が引かれて6円が振り込まれた!
- 10/1 普通預金の利息として7円のうち税金が引かれて6円が振り込まれた!
となります。
振込額が6円ということしか分からないので、実際の利息と税金は逆算します。
具体的には、入金額÷84.685%で計算できますが、計算してくれる便利なWEBサイトもあります。
※銀行から届く利息の案内ハガキでも確認できます。
仕訳はこんな感じです。
取引日 | 借方 | 補助科目 | 金額 | 貸方 | 補助科目 | 金額 | 摘要 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
4/1 | 普通預金 | 振込額 | 6 | 受取利息 | 7 | ゆうちょ利子(税抜) | |
法人税等 | 1 | ||||||
10/1 | 普通預金 | 振込額 | 6 | 受取利息 | 7 | ゆうちょ利子(税抜) | |
法人税等 | 1 |
売上(利息)と税金が分離できていて、決算で法人税を計算する際にも分かりやすくなるため、こちらのパターンを使うのが一般的です。
役員報酬を支払う
役員報酬とはつまり自分への給料です。
定期同額給与といって、毎月同じ金額の給料を払うことで損金として認められます。
そして役員報酬を支払う際には、社会保険料(厚生年金と健康保険)と源泉徴収を同時に行うことを忘れないようにしましょう。
役員報酬の支給日(給料日)は定款には定めませんが、社内ルールとして定めておきましょう。
例えば、月末締め・翌月25日払い等です。
また、社会保険料は厚生年金も健康保険も会社と個人で折半となるため、個人から預かったお金と会社負担分を併せて納めることになります。
※少額ですが、会社のみが負担する子ども・子育て拠出金というものもあります。
年金事務所から支払い通知が毎月送られてくるので、それを使って支払えばOKです。
これらを1行日記風に書くと
- 2/25 1月分の役員報酬5万円のうち、社会保険料10,923円と源泉徴収1,196円を除いた37,881円を振り込んだ!
- 2/28 個人から預かった分と会社負担分をあわせ、社会保険料22,101円を振り込んだ!
となります。
仕訳はこんな感じです。
取引日 | 借方 | 補助科目 | 金額 | 貸方 | 補助科目 | 金額 | 摘要 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
2/25 | 役員報酬 | 50,000 | 普通預金 | 37,881 | 役員報酬(1月分) | ||
預り金 | 1,196 | 源泉徴収所得税 預り | |||||
預り金 | 10,923 | 社会保険料 預り | |||||
2/28 | 預り金 | 10,923 | 普通預金 | 22,101 | 社会保険料支払い(1月分) | ||
法定福利費 | 11,178 |
社会保険料について実務的には、個人負担分を計算して預り金としておき、実際の振込用紙の金額から引き算をして会社負担分を算出(上記で法定福利費の11,178円となっている部分)すると良いです。
源泉徴収所得税としての預り金は、年末調整で個人へ返還するか、所得税として納付するかのどちらかになります。
預り金は、一旦預かった後でどこかへ消えていくのです・・・。
税金を支払う
ここで言う税金とは、法人や住民税等、決算で確定する税金のことです。
決算で確定するということは、実際に納付するのは後日(翌期)になるわけです。
例えば12月31日が事業年度末の場合、1行日記風に書くと
- 12/31 今期は赤字だったので決算で法人住民税均等割分の7万円を納めることが確定した!
- 2/1 法人住民税均等割分の7万円を役員Aが現金で立て替えて納付した!
- 2/25 立て替えた7万円を役員Aへ振り込んだ!
となります。
現実的には決算の集計や提出は12月31日より後の2ヶ月以内に行っている訳ですが、仕訳帳上は12/31に税金が確定したものとして書きます。
また、納付を現金で行う場合には、役員A(要は自分です)が現金で立て替えて支払い、後から立て替えた分を会社から役員Aへと振り込みます。
現金で支払うものについては、上記のように立替払いを使うのが簡単でいいと思います。
仕訳はこんな感じです。
取引日 | 借方 | 補助科目 | 金額 | 貸方 | 補助科目 | 金額 | 摘要 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
12/31 | 法人税・住民税・事業税 | 70,000 | 未払法人税等 | 70,000 | 法人住民税均等割額 | ||
2/1 | 未払法人税等 | 70,000 | 未払金 | 役員A | 70,000 | 法人税 | |
2/25 | 未払金 | 役員A | 70,000 | 普通預金 | 70,000 | 経費払い(法人税) |
実際には、12/31で決算が締められていますので、1行目と2~3行目は別の期の仕訳帳です。
決算では未払法人税等という負債を持ち越すことになります。
家賃を支払う
例えバーチャルオフィスであっても家賃なので、賃借料として記帳します。
バーチャルオフィスの場合は郵便の転送も有料で行っていると思いますので、これは別の項目で通信費を使います。
また、家賃の支払いは銀行振込であるのが普通だと思いますので、振込手数料もかかる場合を考えてみます。
1行日記風に書くと
- 1/31 今月の郵送料700円と翌月のバーチャルオフィスの賃貸料5,000円を振り込み、振込手数料が216円発生した!
となります。
仕訳はこんな感じです。
取引日 | 借方 | 補助科目 | 金額 | 貸方 | 補助科目 | 金額 | 摘要 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1/25 | 賃借料 | 5000 | 普通預金 | Aオフィス | 5916 | オフィス利用料 | |
通信費 | 700 | 郵便転送費 | |||||
支払手数料 | 216 | 振込手数料 |
家賃は前払いなのが普通だと思いますので、決算をまたぐときには、厳密に言えば振替処理が必要になります。
どういうことかというと、前払いした家賃は当期の費用ではないので損益計算上では除外しなければならないということです。
ということで、賃借料は前払地代家賃に振り替えて、資産計上します。
仕訳はこんな感じです。
取引日 | 借方 | 補助科目 | 金額 | 貸方 | 補助科目 | 金額 | 摘要 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
12/25 | 賃借料 | 5000 | 普通預金 | 5000 | 翌月オフィス利用料 | ||
12/31 | 前払地代家賃 | 5000 | 賃借料 | 5000 | 翌期分 |
これで当期に支払った翌月のオフィス利用料は、賃借料という費用から、前払い地代家賃という資産へと振り返られました。
翌期になったら、再度、前払い地代家賃を賃借料に振り替えて費用化すればOKです。
少額なら振り替えなくてもそんなに怒られないかもだけど、厳密にはこうなります!
その他イロイロを支払う
これまでにご紹介した仕訳で、ネット系スモールビジネスならほぼカバーできているのではないかと思います。
あとは細々した支払いとして、例えば、コピー代、交通費、取材費(飲食店代)等が考えられます。
このような細々した支払いは全て、個人で立て替え払いして、後でまとめて会社から支払うというやり方が簡単でいいと思います。
そのときはちゃんとレシートや領収書を保存しておきましょう。
1行日記風に書くと
- 1/15 決算書類のプリント代500円を役員Aが立て替え払いした!
- 1/23 取材で喫茶店Cへ行くのに地下鉄の料金400円を役員Aが立て替え払いした!
- 1/23 喫茶店Cの取材で飲食料金2,000円を役員Aが立て替え払いした!
- 1/25 役員Aが立て替えていた経費を全て支払った!
となります。
仕訳はこんな感じです。
取引日 | 借方 | 補助科目 | 金額 | 貸方 | 補助科目 | 金額 | 摘要 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1/15 | 雑費 | 500 | 未払金 | 役員A | 500 | プリント代(決算書類) | |
1/23 | 旅費交通費 | 400 | 未払金 | 役員A | 400 | 喫茶店Cの取材へ地下鉄を利用 | |
1/23 | 取材費 | 2,000 | 未払金 | 役員A | 2,000 | 喫茶店Cの取材 | |
1/25 | 未払金 | 役員A | 2,900 | 普通預金 | 2,900 | 経費払い |
サラリーマンでも立て替え払いをして、後から会社へ請求することがあると思います。
自分が役員であっても同じことです。
出張日当を支払う
出張規定を作れば、出張の際の日当を支払うことができます。
出張日当は、支払う側(会社側)は経費にできる一方で、受け取る側(個人側)は所得税の対象外なので、お手軽な節税方法としてもよく紹介されます。
法外な金額にはできませんが、一般的な金額であれば認められるのでぜひ。
1行日記風に書くと
- 2/13 役員Aが日帰りでX県へ出張した!(日当が発生)
- 2/25 日当分の現金を役員Aに支払った!
そして仕訳はこんな感じです。
取引日 | 借方 | 補助科目 | 金額 | 貸方 | 補助科目 | 金額 | 摘要 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
2/13 | 旅費交通費 | 2,000 | 未払金 | 役員A | 2,000 | 出張日当 | |
2/25 | 未払金 | 役員A | 2,000 | 普通預金 | 2,000 | 経費払い |
日当は旅費交通費でOKです。
まとめ
ネット系スモールビジネスを営む猫CEOがこれまでに実際に使った仕訳事例をご紹介しました。
必ずや同じような弱小CEOの皆さんには役立つものと自負しています。
むしろ僕が1年目にこんな仕訳事例を知りたかった!
はじめは何が何だか分からないので苦労しましたが、こうやってまとめてみると、使っている仕訳ルールは10個も無いくらいなので、分かっちゃえば簡単ですね。
もっと知りたい!という方は簿記2級を勉強しましょう。
一番簡単なのは3級なのですが、3級は個人事業主向けであって、法人向けは2級です。
僕も簿記2級を勉強中!